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品質がお客様の言いなりだけでは利益貢献できない!適正な品質とは何かを考えませんか?

雪の結晶(青)

お客様が考える品質、作り手が考える品質、設計者が考える品質・・・

それぞれが考える品質がありますが、何が適正なのでしょうか??

そもそも適正な品質って何??

そのあたりを、事例を交えながら紐解いてみたいと思います。

■事例紹介(品質クレーム)

とある樹脂加工メーカーで発生した事例です。

キーボードのキーを押し込んだときに、ドームセンサーに対して押し込み量を伝 えるための小さな突起をシート状に配列させた機能部材で、シートの外周には、それを貼り付けするための両面テープが張り巡らされている部材です。

クレーム内容というのが、その両面テープに0.03m㎡(直径0.2㎜、人の目で見えるか見えないかの限界レベル)の異物が混入しているとい うもの。

両面テープ部に異物が混入しているので、貼った時にその部分が膨らんで貼りム ラができるのではないかという心配があるのと、見た目が非常に気になるとの事でした。

樹脂メーカーさんがクレーム品を確認したところ、両面テープの中に練り込まれた色のついた練りムラであることが判明しました。

異物は中に練り込まれているので、貼った時の膨らみが発生することはないことが分かり、1つ目の問題は解消しました。

しかし、2つ目の見た目が気になるという問題については、両面テープは仕入しているもので、自分たちではどうしようもない問題。

しかし、泣き言を言わずに仕入れ先にお願いしたところ、出来得る改善は実施頂き最小限にはとどめることができたものの、これ以上の練りムラを抑え込むことは難しいとの事。

どうしたものかと困り果てて相談にみえました。

■立場変われば品質は変わる

今回の品質クレームに関して、それぞれの立場の考えを私なりに想像してみまし た。

●作り手側である樹脂メーカーさんの考え

出来得る改善はすべて実施した。その上で、これは外観部材ではなく機能部材な ので、機能に問題なければ外観上の問題はOKにしてほしい。

もしだめなら、別の両面テープに変える必要があるが、それは今のものよりも数倍は高価になる。価格が上がることを許してもらえるのだろうか・・・

●部材を使用する側の考え

機能部材であっても見た目も重視してもらいたい。

●部材設計者の考え

この部材は機能部材であるので、機能性を主体とした品質基準については検討し ている。外観に関しては内部に組み込まれるので、そこまでの想定はしていない。

バラバラですよね・・・

このバラバラを取りまとめると、この部材に関する適正品質が見えてくるはずです。

取りまとめるために、三者が寄って話し合いすることが一番だと樹脂加工メーカーさんに提案しました。

但し、自分たちの言い分だけを押し通すのではなく、冷静にお客様の言い分を存分に聞くこと、そして設計者の方のお考えも存分に聞くことを念押ししました。

お客様の言い分は、「機能部材であっても外観にこだわれ!!!」と、これまたすごい剣幕だったようです。

そこで、そこまで外観にこだわるのは何か理由があるのだろうと思い、その理由をお聞きになったところ・・・

「そりゃーきれいな方がなんとなく気持ちがいいからねー」

「???」

これはちょっと拍子抜けで、これなら話が前に進みそうだと安心されたとのことでした。

そこで、今度は設計者の方に話を伺ったところ、

この部材は貼り付け部分が膨らむと防水性が確保できない可能性があるため膨らみがあればNG、無ければOKの旨明示頂けました。更に、外観に関しは、完全に内装されるものなのでこだわりは不要、と三者で共有することができました。よって、今回の外観問題は不問となりました。

■こだわりと適正品質は異なる

こだわることは大切な事です。

このこだわりがあるからこそお客様に価値を提供することができるからです。

しかし、これは必要なところに対してのこだわりであって、必要がないところに 過剰なまでにこだわると、ムリ・ムダが発生します。

今回のケースで言うと、外観にそこまでのこだわりを持つ必要がないところにこだわりすぎたことが問題でした。

このこだわりに応えるためには材料費を上げることが前提となるでしょう。

しかし、今さら価格は上げられないといった話にもなるのでしょう。価格も品質です。

本当に必要な品質とは何か?

その為にはどのような行為が必要なのか?

その前提として、それぞれの立場が最大限にワザを発揮されているか?

そこをぶれずに冷静に考え、関係する方々と協議し、着地点を見い出すことがで き、今回のケースでは適正品質にたどり着くことができました。

■まとめ

適正品質とは、こんな風に定義できるのではないでしょうか

持てるワザは最大限に活用した上で、必要な品質が価格も含めて関係する方々との折り合いがついた状態で、過剰になっていないこと

ただし、間違えてはいけないのは、すべてのこだわりをなくせというものではありません。必要とするところにはとことんこだわるべしで、それをしなくなると、何の価値もなくなります。

お客様に価値をお届けることが前提です。この前提を忘れずに適正品質を考えてほしいと思います。

モノが変われば考えも変わるでしょう。

しかし、ベースはこの考えで進めることで問題ないと思います。

不必要で過剰な対応になっていないか?

これはムダやムリの発生源となり、長続きしません。

そして、そこに儲けは存在しません。

今回のようにうまくいかないこともあると思います。

しかし、何が本当に必要なのか?を冷静にしっかりと考え、お客様の言いなりになるのではなく、協議し、見定めて欲しいと思います。

そうすれば、お客様も、貴方も利益貢献します。

さあ―あなたも適正な品質を考え、利益貢献しましょう!!