品質管理に「3H管理」というものがあります。
これは一見すると維持管理が目的に思える活動と捉えがちです。
しかし、品質管理の最大の目的は何でしょう?
そうです。
お客様により良いモノやサービスをお届けして利益貢献することです。
その為に品質管理を実践するのですが、ここを取り違えると維持管理に走ってしまって品質改善するに到達しないケースが出てきます。
そのあたりを事例を交えながらお話ししたいと思います。
■品質管理の目的は??
これは利益貢献!!だと断言しているのですが、その前提にはお客様により良いものをお届けするという使命があります。
何故なら、モノやサービスをお客様に提供して対価を頂くという流れが普通ですよね。
その提供するモノやサービスがご満足いただける状態ではなかったら、対価を頂くことはできません。そのために、品質管理を実施するということが前提にあることをおさらいさせてくださいね。
品質管理の目的
お客様に満足頂くモノやサービスをお届けして対価を頂く
■品質管理は維持管理も大事だが・・・
お客様に満足するモノやサービスをお届けするためには、それらに対する「質」を備えておく必要があることはご理解いただけると思います。
その観点に立った時に人は、
「質」を備えておくためには「無難なやり方」や「安定したやり方」でやった方が良い、
という、安定志向に走りがちです。
でも、これ正解なんです。実は・・・
何故か???
慣れない作業や新しい作業、久しぶりに作業をするとき、
例えば
新しく買ったバイクに乗る時、スタンドの動きが以前と違うのでは?ブレーキやアクセルの遊びが以前と違うのでは?
といった、以前との違いがあることを想定して、構えて対応しますよね。
年に1回のひな祭り、久しぶりに出す雛人形を飾るとき、どこに何を配置したらよいのか? ボンボリの電球は切れていないか?など、
慎重に作業しますよね。
仕事でも同じです。
初めての作業、何かが変化した時、久しぶりな作業の時は構えるものです。
そういう時は、人は安定志向になって安全に無難な対応、もっと言うと慎重に対応をしようをします。
これで正解なのです。
むしろ、この対応をすることで品質が備わるといっても過言ではありません。
そうすることでお客様により良いモノやサービスが提供できます。
初めて(Hajimete)・変化(Henka)・久しぶり(Hisashiburi)
これらのローマ字表記の頭文字「H」をとって「3H」というのですが、この「3H」に該当する時は慎重に対応することが重要になってきます。
この活動、一見すると維持管理なのですが、実は今後の品質を向上させて利益貢献につなげるための重要な活動なのです。
■3H管理は「つぶさに観察する」することがポイント!!
3Hの時は、安定志向で対応することが大事であることはご理解頂けたかと思います。
では、この3Hで利益貢献する為にはどうするか?
単に安定志向で対応しようと3Hを見守っていると、残念ながら維持管理だけに終わって儲けには発展しません。
ここで大切なものは・・・
つぶさに観察する事です。
「問題は発生していないか」
「作業にやりにくさはないか」
「不良やロスの発生が想定以内であったか」
など
これは、問題を見つけて解決する、つまり、もっと効率的なやり方に進化・改善
できる種を見つけて対処する活動を行うことで利益貢献につながるのです。
何故なら、もっと効率的なやり方になれば、
時間短縮ができる、
ロスが少なくなる、
といったムダ排除が実施され、結果コスト(原価)を下げる活動となるからです。
3H管理の目的は
つぶさに観察して問題を見つけて対処、そして利益貢献につなげる事なのです。
■簡単な事例をご紹介します
とあるグラビア印刷工場さんで発生した事例です。
これは、お客様からのクレーム発生が発端で、内容は「印刷品に汚れが発生している」というもので、対処に困っているとのことで相談を受けました。
原因を追究していくと、6色刷りの印刷機で2色目と3色目の間の狭い場所(業界では印刷ユニット間というそうです)である為に、印刷直後の基材に気づかないうちに帽子のツバが当たっており、それが汚れのように見える結果となった事が判明しました。
そのユニット間にはインクが置いてあったり、一定時間ごとに印刷されているモノの状態確認をするために出入りするそうです。しかし、今回の現象は、その時に起こったものではなく、この次に作業予定のを段取りを予めやっておこうとして、その中に入って作業をしていた時に発生したものでした。
この段取り作業は、次の作業に対しての時間短縮になるので会社としては良い事ですが、お客様にとってはおせっかいな作業だったようです。
そう考えた作業者らは、「この段取り作業は廃止します」と決めたのです。
これは、確かに正解なのですが、これでいいのでしょうか。
ここで先ず考えてほしいのは、問題が起こった本当の原因が何なのか です。
問題の切り口として重要なのは「作業場所が狭い」ことです。
この狭い場所で作業をしなければいけない理由は何なのか?を考えてほしいのです。
そこで、作業者の方々に質問してみました。
「その作業は、その狭いユニットで実施する必要があるのか」と
そうすると意外にも「実はその場所で実施する必要はないが、昔からやっていて今までの流れからそうしていた」というのです。
やったーーー!!と思いました。
であれば、今までがそうであったからって、そのままやっておく必要はない。
変化させてみたらどうか? と進言してみました。
作業者は「変化させたら次の作業に問題を起こさせそうなので心配」との事。
更にやったーーー!!と思いました。
お分かりですよね。
「3H活動」の出番です。
安定志向で良いから変化させてみよう。
でも、その変化させた作業に問題がないかどうか慎重に観察することを提案しました。
幸いに変化させた作業には不安定さはなく、むしろやりやすくなったとのこと。
更に、狭い作業場所から広い作業場所に変化させたことで、もっとやりやすい方法に変えることができるといった新たな発見もできたそうです。
もっとやりやすくなるということは、間違いなくもうけにつながります。
より良いモノがお客様に提供できるばかりではなく、印刷メーカーさんも利益貢献につながる、まさにWin−Winです!!
■何事も好機と捉えて利益貢献しましょう!
事例はクレームといった後ろ向きの話しでしたが、これを好機と捉えて儲けにつなげることができるのが品質管理です。
捉え方一つで利益貢献につながります。
後ろ向きにとらえて対応するだけなら決して利益貢献にはつながりません。
しかし、何が問題なの? もっといいやり方があるのでは? と、疑問を持ち、解決しようという思いがあれば、必ず利益貢献につながります。
さあ、貴方も積極的に3H活動を行い大いに利益貢献しましょう!!